なんか難病だった話

色々あった結果「下垂体前葉機能低下症」などという診断を受けてしまった。診断に至るまでがなかなか面白い旅路だったので、記録しておく。

時期不明

急に体重が減ったり、食欲不振になったり、やたらと下痢したり、死にたくなったりする。一言で言えば「何をしても疲れていた」が、周囲も私も「まあストレスじゃね?課題多いしな!」で片付けていた。


地元の婦人科

月経痛も酷いしPMSか?と、婦人科に行って処方された当帰芍薬散を数ヶ月飲み続けるが、症状はあまり変わらない。

小さめの内科

就職活動中の症状が特に酷く、極度の疲労感と週に一度の下痢があった。あるとき高熱・下痢・倦怠感・頻脈・意識ぼやぼや~が同時に襲いかかってきて死を覚悟したことが。(今思えばアレは死に至らなかった副腎不全です、完全に…)

ともかく当時の私は甲状腺機能亢進症を疑い内科のクリニックで血液検査・心電図検査を受けたのだが、「甲状腺の数値は全く正常。鉄欠乏性貧血っぽいけど体重減少がよく分からん」ということで総合病院に紹介をされる。この総合病院でドクターショッピングをやめられることになった。


総合病院にて

まず血液、尿、腹部エコーの検査を受けた。腹部エコーに異常所見は無かったが、「10時に採血したわりには副腎皮質ホルモン(コルチゾール)の値が低い」などと言われた。6.58μgだったか。あと若干蛋白尿だね、とか。

家に帰ってまずググったよね、副腎。なかなか聞き慣れない臓器。腎臓の上にくっついているが、その機能としてはあまり関係がないという。

ACTH負荷試験
1時間は平気で待つのが総合病院

後日の早朝、ACTH負荷試験を受けた。ACTH負荷試験とは、副腎皮質刺激ホルモンを身体に静注して、副腎からコルチゾールがちゃんと出るかどうかを確かめるもの。

健康的な人類なら静注30分後にコルチゾールが18μg以上あるべきだが、私の場合はそれより少し低い値(17.10μg)が出た。したがって、「副腎不全が否定出来ない」そうだ。

それはそれとして、留置針は本当に痛い。利き腕じゃない方を頼むよ~、とお願いして左腕で採血しようとしたら失敗、右腕でなんとか成功したが手をニギニギしないと血が出てこない始末。針の激痛と駆血帯の苦しさに絶望して泣いた。(病院で泣いたのは、尾てい骨付近の粉瘤を除去する際に部分麻酔が全く効かないままメスを入れられ、痛みを我慢しながら号泣していたら『痛けりゃ痛いと言え』と叱られた事件以来だろうか。それ以来何かと痛みを主張するようになったが、それもそれでウザいのでは…)

24時間蓄尿検査
地下鉄ユリン事件

そのまた後日、蓄尿検査。通院日の前に1日分の尿を貯めておき、尿中のコルチゾール値などをみる。クレアチニン値が正常ってことは少なくとも腎臓は元気なのかな?尿中コルチゾール値は当日に結果が出ないらしく「焦らすなあ」という感じ。

この日の採血では、脳下垂体前葉から出るホルモンが検査された。だいたい正常値でムカついた。周囲の人類は「何も無ければ良いね」などと能天気に!!言うが、私から言わせれば「癌でも見つかってくれた方がマシ」である。検査入院までして「何もない」のは「健康的」ではなく、「治療法が見つからない」ということでしょー。

医者が何度も主張するところによれば、私は 副腎皮質機能低下症 Adrenal Insufficiency疑いがあるものの、検査入院で様々な検査をしないと確定できない「グレーゾーン」らしい。副腎そのものに原因があってコルチゾールが出ないのが「原発性副腎皮質機能低下症」こと「アジソン病」。下垂体や視床下部に原因があるのが「続発性」であり、「下垂体前葉機能低下症」と呼ばれるらしい。症状見る限りどちらにしろ厄介。


検査入院の準備


色々と手続きなどがあって忙しかった。あってよかったTrelloのチェックリスト機能、限度額適用認定証、そして国民健康保険。(限度額適用認定証のおかげで、10割負担なら33万ナンボだった入院費が4万で済んだのだ)

検査入院があるかもよ、と言及された時点で「入院したい」という気持ちしかなかった。大学さえなければなあ。入院直前の症状は大体こんな感じ。

  • 基本的に寝たきり、昼夜逆転かつ過眠。1日10時間は余裕、15時間寝てたことも(一時期己を「ドラキュラ伯爵」と自称していた)
  • 食欲不振:1日1.5食ぐらいで満足してしまう
  • 体重が減る
  • 鬱っぽいのがひどくなる
検査入院 1日目:留置針つらい

受付手続き、レンタル入院着を受け取り、身長体重を測り、レンタル入院着が思いのほか肌寒いことに気付いた頃、主治医からこんな説明を受ける。

  • あなたには下垂体機能低下症の疑いがある。下垂体は生命維持に必要で、特にACTHが出てないと大変なことになる。一応難病のため程度によっては医療費の補助が受けられるかも、云々
  • ちょっと研究してるんですが、参加に同意して頂けるなら署名を…
  • 検査入院では、数多の負荷試験と採血があなたを徹底的に調べる!

1日目は腕に留置針を刺すのみ。蓄尿検査もする予定だったが、アクシデントで出来なかった。

「あれぇ~…」「血管が逃げますね」「手の甲の血管すら細い…」と看護師に言わしめるほど私の血管は探しにくいらしい。十数分も腕を揉まれ続け、2度失敗されると、もはや私は彼女に同情していた。別に怒らないけど痛いのは辛いし泣く。

やっと留置に成功したのは強そうな人に来てもらった時であった。針を入れるのが上手な人は、駆血帯をそれこそ痺れるまでガッッッチガチに巻いてくる。そうでもしないと血管が出ないんだろうね。

1日目の夕食

初めての病院食は米、きゅうりの磯和え?、ゼンマイの炒り煮、メロン、たらフライ。多い。

あと心電図検査と胸・腹・頭のレントゲン撮ったり。

検査入院 2日目:日内変動採血

様々なホルモンの分泌が正常か?ってことを調べるために、7時・16時・23時に安静状態で採血をする。通常成長ホルモンは夜に多く分泌されるし、ACTHとコルチゾールは朝に多い。それが日内変動。

朝飯:多い、苦しい、ほうれん草のなんたらの味が薄い…

朝7時、検査のためとはいえ、朝から採血管7本分も血を抜くと聞いて、目の前が暗くなるような気持ちになる。痩せているのに血をたくさん抜くのがヤバいことぐらいは知ってるからね。

血抜いて食欲が湧くってわけでもないのでますます辛い。食べなきゃいけないってことは理解しているから一応完食はするけど、とにかく非常に苦しいのだ。これを易易と完食出来る人間が居ることが信じられん。

昼食:ちゃんぽん残しちゃった

シャワーは腕の留置針のところにラップを巻いてもらってから入るシステムだった。濡れないようにするのにすごく気を揉んだけど、結局破れて濡れた。疲れた。

逆血が気になる

この日はあまりにも疲れすぎて、洗顔フォームで歯を磨いてしまう痛恨のミスを犯してしまった。洗顔フォームはほんのり甘く、吐き気を催す化学物質の味がする。あれ以来顔を洗う度に思い出してちょっと吐きそうになるんだよね。疲れたときは休むべき。

夕飯:ブッコロリは虚無の味

夕飯は必死に自分を励ましながら完食。完食後に強い背中の痛みと虚脱感を覚えて少し寝た。酸っぱいものが喉に詰まり、咳き込みながら目覚めた。何だったんでしょうねあれ。

16時の採血は記憶なし。23時の採血、ボヤ~って感じ。あまりにも眠れない夜を過ごす。

検査入院 3日目:三者負荷試験
知らない、点滴

三者負荷試験とは、TRHCRHLH-RHを静注して下垂体が生きてるかどうかを確認する検査。注射後0分、15分、30分、60分…みたいな調子で計7回採血した。内分泌内科の医者3人(主治医含む)が様子を見に来た時、King CrimsonのRedか?と…

おいしい昼飯

前日の20時から食べてはならず、当日8時からは水を飲むのも禁止、そして絶対安静だけど「絶対寝ちゃダメ」と主治医に釘を刺される。検査値に影響するんだろうね。

おやつのオレオ

注射の直後は副作用による激しい嘔き気と尿意に襲われたが、10分程度経つとそれは治まり、しばらくすると空腹感を覚えた。検査終了後は珍しく食欲があって、白米すら美味しく感じた。その時は理由が分からなかったが、結果説明を受けた時になんとなく察することが出来た。

夕食:ハヤシライスとか

主治医によれば「下垂体そのものを直接刺激したらちゃんとACTHが出ていた」らしい。副腎が障害されていない限り、ACTHが出ればコルチゾールも出る。だから一時的に食欲が蘇ったんだろう。

夕食後、また背中が痛んで泣いてしまう。主治医に言ってみたが原因は分からずじまい。腎臓は異常がないらしいし…

留置針は段々と存在を意識しなくなる

入院そのものもストレスだったことは間違いないが、一番のストレッサーは大部屋だった。私含めて4人がそこに入院していて、私以外の3人は仲が良いオバチャンでアウェー感すごいし、そのうち2人は夜のイビキがヤバい。面会者との会話はいいけど、病室で電話は辞めてくれよ。病人同士なぜ配慮が出来ない?私は諸々の疲労のせいで昼夜問わず辛いんだよ畜生、音楽だってイヤホン着けて聴いてんだよ…とキレる元気もこっちには無いのでね、困ったね。金があるなら迷わず個室にするべき。そうする価値がある。

検査入院 4日目:GHRP-2負荷試験
うわっ内出血

成長ホルモン分泌刺激試験。三者試験と同様に絶対安静、飲食禁止。腕に生理食塩水の点滴を繋がれ、5回採血される。副作用は腸にガスが溜まって気になるだけ。

三者試験は3時間かかったけどこれは1時間だったから楽。しかし眠い。

突然呼ばれて甲状腺らへんのエコー検査をしたけど、特に異常なし。筋力低下のせいでペットボトルが開けられず、看護師に頼んで開けてもらった(老人ムーヴ)。

あまりにも眠れなかったので「ゾルピデム酒石酸塩」という眠剤を貰ったら、LSDをやったような、明晰夢的な幻覚を見た。6時間だけなんとか眠れた。

検査入院 5日目:インスリン低血糖負荷試験

インスリン低血糖負荷試験は、要するに身体を無理やり低血糖状態に陥らせて、GHとACTHが分泌されるか否か確かめるもの。

 実際のストレスに対する視床下部―下垂体―副腎系の反応をみるため…続発性副腎機能低下症の原因が視床下部性かどうかを判断するために有用である.…
簡易血糖測定器による血糖測定の準備と20%ブドウ糖 20mlの準備を予め用意する.副作用として,体熱感,発汗,動悸,眠気など低血糖症状が現れる.傾眠となることがあるが,眠らせないように留意し,意識障害の傾向などの出現時には直ちに 50% ブドウ糖を静注射する.(陰山 & 須田, 2008, p. 47)

この日も安静かつ飲食禁止で、7回採血。低血糖状態が行き過ぎて意識が月の暗い側へ行ってしまうと非常にまずいので、ほとんどの時間医師が付き添っている状態で検査をする。主治医に馬鹿馬鹿しい質問をしたりして眠気に耐えていた。

血糖測定器の痛みを体験できたのがちょっと面白かったかな。強めの蚊に刺されたような感じ。

主治医(血糖測定器を取り出す)
私「あっそれ、アレでしょアレ、ほらアレ」
主治医「アレです」
私「I型糖尿病の人が使う…血糖測るやつ…どうせ痛いんだrウワァーー!!!」プチ
主治医「昔に比べたら痛くなくなってるんですけどね…」

検査後留置針が抜かれ、晴れて自由の身になった。腕にラップを巻いてシャワーに入らずに済むの、素晴らしくないか?

どうしてこんなになるまで略

夕方主治医に呼ばれ、結果説明。かなりうろ覚え。

  • 朝のACTH量がめっちゃ少ない
  • 三者試験:プロラクチンが反応しすぎ(潜在性高プロラクチン血症かも)ACTHやTSHは正常反応
  • ビタミンD欠乏気味だからきのこ類と魚食べるといいよ
  • 低血糖に反応して出るはずのACTHが出てない。即ち視床下部の反応が悪い。だが、分泌予備能はある。コートリル5mgを毎日朝補充、感染症・胃腸炎や抜歯の際は10mg錠を1, 2錠服用すること(私より重症の人はもっと飲んでるんだとか)

へ~そう… 私の疾患には色んな呼び方があるらしい。ややこしいが、中身はほぼ同じ。

  • [視床下部性|二次性|三次性|続発性]副腎皮質機能低下症
  • 二次性下垂体前葉機能低下症
  • ACTH分泌不全症

下垂体前葉機能低下症は、一応厚生労働省の指定難病らしい。難病情報センターでは「難病」をこう定義している。

難病は、1)発病の機構が明らかでなく、2)治療方法が確立していない、3)希少な疾患であって、4)長期の療養を必要とするもの

一度低下したホルモンの分泌量(私の場合ACTH)が回復することは主治医は「ほとんど無い」と言っていたし、サイトにも「ホルモンの補充を長期間(多くの場合、生涯に亘って)続ける必要が」あると明言されていた。面倒くさいNE!

検査入院 6日目:退院
朝メシ

退院!退院!さっさと退院!

朝、看護師からコートリル5mgを貰って飲んでみる。目覚めが良くなったぐらいかな、体感は。

21日分の薬を貰い、最後の朝飯を食べ、入院費を支払って華麗に帰った。


退院後

突然月の暗い側に行ってしまっても救急隊員が私を助けられるように、一応ヘルプマークを役所で貰ってきた。「ICカード入れ的な構造でしょ」と思ったら全然違うんだよね。

ゴム的な素材の裏側にメモ用のシールを貼り、そこに「自分はこんな疾患で、疲れると最悪 Stairway to Heaven する」みたいなことを書く仕様になっている。メモするところも狭いし、あんまり耐水性なさそうだし、ぱっと見スイスの国旗だし、もうちょい改善の余地があるんじゃあないか?一応着けとくけど…

記事がいい加減長過ぎるので、一旦ここで切る。